「ノーザンライツとはオーロラ、すなわちアラスカの空に輝く北極星のことである。この本には、運命的にアラスカに引き寄せられ、原野や野生生物と共に生きようとした人たちの、半ば伝説化したうらやましいばかりに自主的な生涯が充ち満ちている。圧倒的なアラスカの自然を愛し、悠然と流れるアラスカの時間を愛しつづけて逝った著者の渾身の遺作。カラー写真多数収録。」

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星野さんは写真家。おしくも1996年にロシアで取材中、熊に教われて急逝。
この本は全てがノンフィクションで、多くの彼のアラスカの友人達の生き様を中心に、アラスカの問題、自然の素晴らしさを伝えてくれるのですが、抑えた文章であるのに読んでいると、小説のように思えてきます。

アラスカに青春をかけた若きアメリカ女性パイロット、シリア・ハンターとジニ―・ウッドの二人の過去と現在を交差させ、そこに多くの人々がアラスカの近代の歴史と共に語られていくんですが、この二人の女性もすごく印象的。でも個人的にはセス・キャントナーという白人の子としてアラスカに生まれた星野さんの友人。

エスキモーの暮らしも大きく変わりつつある時代の中で、白人の両親は狩猟だけによる原野の生活を求めてエスキモーたちが捨てていった土地に住み、エスキモーの古い価値観を受け継いでいった。

今まで一度も学校に行ったこともなく、狩猟民の血が色濃く流れていたセスも、大人になって自分の知らないもうひとつの世界に向きあわなければいけなかった。
本文から抜き取ると「誰よりもエスキモーのように育ったのにエスキモーではなく、白人の顔をしているのに白人でない」というセス。

彼がアラスカでも都会のフェアバンクスへ出て、タクシードライバーとして働いたときの体験。それを彼が、エスキモーでも白人でもない彼のジレンマと、彼の見知らぬ世界であるタクシーの客とのやりとりを彼なりのユーモアで文章として書き上げる。

なんかもう読み終わってから一度もであったことのないセスにすごい親近感がわいてしまいました。

とにかく素敵な人がたくさん登場してくるんですね。
彼らは有名でもなくて、世界から忘れ去られたような土地であるアラスカにひっそりと暮らす人々。でも、彼らの思いは熱く、まさに一日一日を精一杯生き、楽しんでいるようなのがわかるんですね。

アラスカの景色の描写と歴史、そしてこの熱い人々で揃って、本当に映画にしたら面白いんじゃないか、と思います。

ちなみに本の題名の「ノーザンライツ」ですが、確かに北米では「オーロラ」と呼ぶよりは「ノーザンライツ」という方がどうやらポピュラーのようですね。

オーロラっていってわからないってわけではないようですが。
ちなみにオーロラの名称はローマ神話の暁の女神アウロラ (Aurora) に由来するそうです。

これも余談ですが、トロントの北の町はオーロラという名前。なのにオーロラはオーロラとは呼ばれてないっていうのがなんか面白いですよね。

私もせっかくカナダにいるし、一度はオーロラ見てみたいなあ。